日本で10万人以上の患者がいるとされる脳神経系の病気「パーキンソン病」は、誰でも発症する可能性のある病気で、しかも現代医学において以前として原因が解明されていません。
そんな難治療のパーキンソン病は、どのような病気なのでしょうか。
私たちの脳細胞に流れている神経伝達物質ドーパミンニューロンは、「運動機能/認知機能」といった中枢機能に関与している物質です。
そしてドーパミンニューロンは、10歳年を取るたびに約10%死滅することがわかっています。
「誰もが発症し得る病気」といった理由~それは、パーキンソン病がドーパミンニューロンの減少によって発症する病気だからです。
例えば高齢者が、「物覚えが悪くなった/震えがきたり、転びやすくなった」という言葉を耳にします。
こうした症状は、ドーパミンニューロンの減少が関与しているのです(もちろん、高齢者全員がパーキンソン病を発症するわけではありません)。
では身近な人がパーキンソン病を発症した場合、どのような症状を引き起こすのでしょうか。
運動機能の場合、「手足が震える(振戦)/動きが鈍くなる(無動)/筋肉が硬くなる(固縮)/身体のバランスが悪くなる(姿勢反射障害)」といった症状があります。
その他では、「便秘や頻尿などの自律神経の症状/不眠などの睡眠障害/うつ症状などの精神症状/認知機能障害」といった症状があります。
しかしこうした症状を見抜くことは、非常に難しい現状にあります(特に初期症状では)。
だからこそ、パーキンソン病は周りにいる人たちとの意思の疎通が大事になってくるのです。
そして上記に明記した症状が気になるようであれば、早めに主治医の先生に相談しなければなりません。
パーキンソン病は完治することができない難病の1つですが、パーキンソン病を発症したからといって自暴自棄になってはいけません。
何故ならまったく治療をしなければ、すぐに症状が進み寝たきりの状態になってしまうからです。
しかし、諦める必要はありません。
確かに難病のパーキンソン病かもしれませんが、早くから適切な治療さえすれば、健常者と同じような生活を続けることができるのです(ちなみに、認知症を発症した場合は事情が違ってきます。寿命もかなり短くなってしまう傾向にあります)。
そしてこの項では、「若年性(家族性)パーキンソン病」について触れてみたいと思います。
一般的に、「パーキンソン病=高齢者」に発症する病気だと知られています。
実は高齢者だけでなく、若い世代にも発症する可能性があるのです。
この症状を「若年性パーキンソン病」といいます。
若年性パーキンソン病の場合、40歳以下の人に発症し、中には10代で発症することもあります(約10%)。
そんな若年性パーキンソン病は、何が原因で発症するのでしょうか。
若年性パーキンソン病の場合、遺伝子が大きく関与していることが解明されています。
事実、両親や兄弟姉妹にパーキンソン病を発症しているケースが数多く報告されています。
そして何といっても若年性パーキンソン病の特徴は、進行状態が非常に緩やかであることです。
それ故、高齢者のパーキンソン病と比較すると薬やリハビリの効果が持続するといわれています。
更に、しっかり睡眠を摂取することも、若年性パーキンソン病には効果があるともいわれています。
それと勘違いしてはいけないことがあります。
遺伝子保有者が、絶対に若年性パーキンソン病を発症するわけではないということです。
あくまでも可能性があるだけで、若年性パーキンソン病を発症していない方は大勢いるということです。
現代の医学では完治が難しいとされるパーキンソン病ですが、さまざまな治療によってパーキンソン病の進行を抑制することはできます。
この項では、「薬物治療/食事治療/外科的手術」3つの治療法について考えてみたいと思います。
○薬物療法
パーキンソン病を発症する原因は、脳の伝達物質ドーパミンの減少によるものといわれています。
単純に考えると減少したドーパミンを投与することで、パーキンソン病を改善できると思うかもしれません。
しかしドーパミンを投与すると、脳細胞が「ドーパミン=有害物質」と認識してしまうのです(投与できない)。
そこで、ドーパミンに代わりに投与されているのが「L-ドーパ(L-DOPA)」という物質です。
L-ドーパは薬物治療の中で、もっともパーキンソン病に効果があるとされています。
○食事療法
パーキンソン病の食事治療は、個人の症状によっていろいろ変える必要があります。
そうした食事療法の中で低蛋白食療法があります(すべてのパーキンソン病患者様に当てはまるわけではありません)。
低蛋白食療法は朝食・昼食の蛋白質の量を減らし、夕食に減らした蛋白質を一気に摂取する治療法です。
ただしL-ドーパといった薬物治療でパーキンソン病に改善症状がみられる場合、低蛋白食療法をする必要はありません。
○外科的手術
以前、パーキンソン病の外科的手術といえば「凝固術」が一般的でした。
しかし、凝固術はもろ刃の剣でもありました。
何故なら「脳のどの部分を、どのくらいの大きさで。しかもどのような形で凝固」するかによって、身体的麻痺を発症させる可能性があったからです。
そして現在、行われている外科的手術が「脳深部電極刺激療法DBS」です。
脳深部電極刺激療法DBSは脳内に電極を埋め込み、胸部に刺激装置を埋め込むことによって、パーキンソン病の進行を抑制する手術法です。
パーキンソン病の病態の進行速度は、かなり個人差があります。
しかし(残念ながら)間違いなくいえることは、確実に数年単位でゆっくり進行し続けることです。
ただ、パーキンソン病を発症して10年以上経っても、元気に登山ができる患者様もいるのです。
確かにパーキンソン病は進行しますが、医師の処方に従ってしっかり治療をすることが重要といえるのです。
そしてこの項では、パーキンソン病の主な進行症状をチェックしたいと思います。
○震え
パーキンソン病の初期症状の中で、もっともわかりやすいのが震えです(患者様の約60%)。
震える個所は「手/足/頭」等々、まったく身体を動かしていないのに、急に震え始めます(「身体を動かしてる/睡眠中」、震えが発症することはありません)。
○歩行障害
「最初の一歩が踏み出せなくなる/歩幅が狭くなる(小刻み歩行)/手を振らないで歩く」等々、パーキンソン病を発症するとこうした歩行障害を発症します。
○嚥下障害(えんげ)
パーキンソン病を発症した約50%の患者様が、「よだれをた垂らす/食物がうまく飲み込めない」といった症状を発症します。
そうした症状の原因は、「口唇/舌/喉」などが固縮して動かなくなるからです(次第に無表情になっていく)。
○言語障害
パーキンソン病の中期症状に1つに、「小さな声で話す/早口になる/どもる」といった言語障害が現れます。
○認知症
認知症はパーキンソン病の末期症状です。
そしてパーキンソン病患者様の認知症発症率は、健常者の5~6倍の多さです。
ちなみにパーキンソン病の認知症をチェックする場合、「考えがまとまらない/記憶力が低下する/注意力が散漫になる」等々が見受けられれば要注意が必要になります。
パーキンソン病を発症しているとわかった時点で、早急にしなけれならないことは薬物治療と「リハビリテーション」です(この項では、リハビリについて詳細に説明したいと思います)。
リハビリが必要な理由~それはパーキンソン病が進行するにしたがって、身体の関節が固くなってしまうからです。
それ故、関節可動域訓練やバランス訓練をしっかりする必要があるのです(歩行中の転倒を防ぐため)。
つまりパーキンソン病のリハビリの目的は症状の進行を予防するするだけでなく、動きにくくなった動作を再び動きやすくすることにあるのです。
では、実際のリハビリポイントについて説明します。
パーキンソン病患者様の場合、「身体を捻じる動作/関節を曲げる動作」が難しくなってきます。
それ故、自分のできうる範囲でいいので、各関節を動かすことが重要になってきます(日々のリハビリ)。
また身体の柔軟性を維持するため、「立位/坐位」で身体をゆっくり前後に曲げたり伸ばしたり、ゆっくり左右にひねることが有効なリハビリになります。
最後に、リハビリはパーキンソン病患者様1人で続けるわけではありません。
家族のみなさまの支えがあって、初めてリハビリの効果を発揮することができるのです。
例えば健常者であれば簡単にできる動作も、パーキンソン病患者様にとっては難しい動作かもしれません。
ちょっとしたリハビリでもクリアできれば、思い切り褒めてあげてください。
人は褒められることによって、より多くのドーパミンが放出されるからです(さまざまなことを一緒に共有して、一緒に楽しむことが大事なのです)。
パーキンソン病は長い付き合いになる病気です。
是非、無理のない範囲で、家族のみなさまも一緒にリハビリに取り組んで頂きたく思います。